よく見る家は賃貸か、購入か論争について
ネットの記事やメディアなどで、「家は賃貸が良いのか、それとも買うべきか」という論争をよく目にしますよね。皆さんも一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。
そういった記事の多くは、損得勘定や経済合理性といった「理屈」をベースに語られている印象があります。もちろん、住んでいるエリアが都市部か地方かによっても前提が変わるため、一概にどちらが正解とは言えない問題です。
さて、理屈や損得でこの問題を語るのは簡単です。だからこそ今回は、地方の不動産屋として、あえて理屈ではなく「感情」の面からこの問題を考えてみたいと思います。
これまで数多くの売買や賃貸の現場に立ち会い、さまざまなご家族の人生の節目を見てきました。その経験を踏まえて、あえて感情の話をさせてください。人間は結局のところ、感情の生き物です。もし何事も理屈だけで解決できるなら、人間関係で悩む人なんてこの世にいないはずですから(笑)。
なお、私は地方で不動産屋を営んでいますので、ここからのお話は都市部ではなく「地方都市の目線」でお伝えします。
結論から申し上げます。 家は賃貸か、買うべきか……私は「買うべき」だと考えています。 ただし、「ファミリー層に限る」という条件付きです。お一人暮らしの方や、パートナーとの二人暮らしを想定されている方には、必ずしも当てはまりません。
なぜファミリーは家を買うべきなのか。その理由をお話ししましょう。
まず地方においては、ファミリー向け賃貸物件の選択肢が非常に少なく、広さにも限界があります。賃貸物件の主流は単身向けや2LDKです。3LDK以上の間取りになると、物件数は極端に少なくなります。
なぜなら、アパートやマンションの大家さんは事業投資として建物を建てるため、部屋数を多く確保して利回りを高めようとするからです。一部屋の面積を広くして総戸数を減らすことは、空室リスクが高まるため敬遠されがちです。その結果、3LDK以上の物件は市場にあまり出回りません。
さらに、仮に3LDKの賃貸があったとしても、専有面積は良くて60平米台。この広さに子ども2人以上となると、どうしても手狭に感じてしまいます。
せっかく地方に暮らしているのなら、ゆとりのある住まいで伸び伸びと子育てをしたくありませんか? 幸いなことに、地方には土地のゆとりがあります。コンパクトな土地でも50坪以上あるのが普通です。
広いリビングで家族が団らんし、子どもたちにはそれぞれの個室がある。ささやかな庭先で縄跳びをしたり、夏にはビニールプールを広げてバーベキューを楽しんだりする。これらを実現できるのが、マイホームの大きな魅力です。
こうした暮らしは、お金には代えがたい時間をもたらしてくれます。これは単なる経済的な問題以上に、子育てにおいて極めて重要な「体験の質」を左右するものだと感じています。幼少期にそうした環境で過ごした時間は、子どもの心の中にかけがえのない記憶として刻まれていきます。
愛する家族にそのような環境を用意できることは、親自身の幸福感をも最大化してくれるのではないでしょうか。
「それなら、戸建ての賃貸を借りればいいじゃないか」という声もあるでしょう。 確かに、賃貸の戸建てでも似たような環境は作れます。しかし、そうした物件の家賃は相応に高額です。
そして子どもが成長し、独立したとき、その高い家賃を夫婦二人だけで払い続けるでしょうか。「もう少し手頃な広さの賃貸へ引っ越そう」となるのが自然な流れです。
しかし、その選択をした瞬間、巣立った子どもたちからすると「帰るべき実家」がなくなってしまいます。自分が幼少期を過ごした、思い出の詰まった場所が消えてしまうのです。
一方で家を購入していれば、子どもが独立したからといって、特別な事情がない限りすぐに売ることはまずありません。お正月やお盆休みに、いつでも帰れる実家があり続けるのです。子どもが結婚して孫が生まれれば、みんなで一緒に帰省できる温かい場所がそこには残っています。
不動産の仕事をしていると、実家の相続に関する売却相談を非常に多くお受けします。 その際、親が亡くなったからといって「はい、すぐに売りましょう」と割り切れる方は滅多にいらっしゃいません。最初は売る気になれず、なんとか自分たちで維持管理できないかと悩まれる方が大半です。
なぜそこまで悩むのか。それは、相続したお子さんたちにとっても、たくさんの思い出が詰まった大切な家だからです。「誰も住まないからさっさと手放す」と割り切れないのは、まさに純粋な愛着や感情があるからにほかなりません。
子どもにそう思ってもらえるなんて、本当に素敵な家であり、温かい家族関係だと思います。そして、その絆や思い出を育んだ器こそが、かつて決断して購入した「家」だったのです。
実は最近、私自身も似たような経験をしました。 両親は健在ですが、実家が少し不便な場所にあったため、生活の利便性を考えて中心街のマンションへ住み替えることになりました。両親がコツコツと片付けを進め、まだ売却はせずに建物自体は残っているものの、家財道具がなくなった実家は、私の記憶にある温かい実家とはどこか違う、遠い存在に感じられてしまったのです。
そのとき初めて、これまで売却のお手伝いをしてきたお客様たちの寂しさや葛藤を、当事者として深く実感しました。
胸に押し寄せる寂しさと同時に、これまで自分を育んでくれた家に対する感謝の気持ちが、改めて湧き上がってきました。そして、「自分の子どもにも、いつかそう思ってもらえる実家を残してあげたい」と心から思ったのです。
少し熱を込めて語りすぎてしまったかもしれません。 今回は「賃貸か、購入か」という永遠のテーマについて、あえて経済合理性を取り払い、購入を後押しする立場から感情論でお話しさせていただきました。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント